2009年の農地法改正に伴い、農業参入をされる企業が増加しています。既存事業を活かして参入をされた企業、新事業として参入をされた企業などさまざまな農業参入をする型があります。

しかし、いったい何からはじめれば良いのか?これから農業参入を検討される企業の方々の中には、このような漠然とした不安を持たれているかと思います。

今回のコラムでは、農業参入の成功・失敗のポイントと活用できる補助金制度についてご紹介します。

農業参入する企業が急増中!増加の理由とは?

2009年に農地法が改正され、企業による農地の貸借に関わる規制緩和が行われました。それにより、農地を借りて農業を行うリース方式の営農であれば、農業参入を制約されてきた株式会社やNPO法人なども農業に参入可能となりました。

加えて、農地を最大限活用するために、農地の権利取得に関する規制も見直されたことで、企業の農業参入が増加。改正前と比較し、農地を有効活用する点でも大きな効果があったと言えます。農地法の改正は重要な変化となり、貸借のリース方式であれば、企業は農業参入を全国で可能になりました。

企業が農業参入により得られる3つのメリット

農地法の改正によって参入しやすくなったことで、多くの企業が農業への新規参入をめざすようになりました。そこで、企業が農業参入をする主なメリットを3つ解説します。

農業参入を支援・推進している自治体が多い

現在多くの自治体で、企業の農業参入を支援する制度を設けています。

例えば、兵庫県では「ひょうご就農支援センター」「地域就農支援センター」といった窓口を設け、県レベル・市町村レベルで関係機関と連携しながら参入を検討する企業からの相談を受ける体制を整えています。

その他にも、定期的にセミナーなども開催しています。農業参入に意欲のある企業を対象として、農業参入方法・制度等の説明や既に参入している企業の取組事例の発表・紹介等を行っています。

また、参入初期の負担軽減と参入後の経営発展を目的とした補助金も用意しています。

今回は、兵庫県を一例としてご紹介しましたが、各都道府県で類似の取り組みを行ってますので、参入を検討している都道府県のホームページをご確認してみてください。

雇用維持・事業創出につながる

農業生産以外での農業参入も見受けられます。農業に関連しない企業が、従来の事業を農業分野に活かして事業拡大や経営の多角化を狙うケースです。

土木建築業や造園業者が本来の業務の閑散期に重機や操作する従業員の技術を農業に活用したり、IT関連企業がシステム開発などの技術を活かしてスマート農業の分野に参入したりする事例があります。

農業分野に参入することで、閑散期における人材の雇用維持や機材維持に役立つ、中小企業が事業範囲を拡大したりできるなどの大きなメリットがあります。

また、農業と関係の深い企業が参入することで、相乗効果もたらすケースもあります。

食品メーカーや飲食店などが自社で農業経営を始めて、農産物を自社製品に活かす6次化、地域の観光業者が自社で観光農園を経営するといった事例があげられます。

これらの事例は、農業が新たな収益源としてだけではなく、既存の事業にも多様なメリットをもたらすことを示しています。

企業イメージを強化できる

農業には、食料を生産するだけでなく、地域の自然環境を維持するシステムとしても重要な役割があります。

また、自然の中で生命に寄り添って行う作業が、日常生活では得ることができない心身への良い影響を与える効果も期待されています。

そうした農業の特性に着目して、企業のCSR(Corporate Social Responsibility)やIR(Investor Relations)に活用されています。

例として、農福連携事業による障害者雇用の拡大、地域の耕作放棄地の解消や雇用創出、エネルギーの再利用による環境・資源への貢献などがあげられます。

CSRは、投資家による企業評価の重要要素の1つであり、社会的貢献を通して、企業価値の向上にもつながっています。

農業参入の成功事例

実際に、上記のようなメリットを踏まえ、農業に参入した企業の成功事例を紹介します。

【異業種】製油業界からの農業参入 うれしのアグリ株式会社

うれし野アグリ株式会社さんは、三重県松阪市でミニトマトの生産・販売を行っています。
三重県内の間伐材の木質チップを利用した「バイオマスボイラー」を熱源として蒸気を発生させ、その蒸気を使って植物油脂の製造を行っています。
その際に発生する180度の蒸気と工場から排出される温水を熱交換して、冬場の暖房としてエネルギーとして使用しています。

木質バイオマスを使用する背景には、三重県は県土の約65%(令和元年度の統計)が森林のため、大量に出る間伐材などを有効する目的があります。

また、うれし野アグリ株式会社さんでは正社員約10名、パート従業員約110名の雇用をしています。パート従業員の大半は地元で暮らすお母さん方です。
地元で新たな産業をはじめるということは、新たな雇用を創出することにもつながっています。

うれしのアグリ株式会社の事例を見る

【農福連携】医療業界からの農業参入 ウェルファームMINORI

ウェルファームMINORIさんは、大分県別府市にある農協共済別府リハビリテーションセンターが運営する障害福祉サービス事業所です。ここでは、ミニトマト栽培による農作業を通じて就労継続支援B型の作業所利用者さんの機能訓練を行っています。

ミニトマトを選んだ理由の一つとして、片麻痺の方が片手で収穫ができる、車椅子の方が乗ったまま収穫ができるという利点があるとのことです。
また、ミニトマト栽培は栽培~出荷までにさまざまな業務があり、十分な作業量を確保でるため、安定した業務量を提供できます。

また、ウェルファームMINORIさんは、別府市という土地柄を活かして冬場の暖房に温泉熱を使用することでエネルギーの有効活用にも取り組んでいます。

ウェルファームMINORIの事例を見る

【事業拡大】インフラ業界からの農業参入 上寺いちご園

上寺いちご園さんは、九州電力株式会社が運営する農場です。
九州電力株式会社は、グループ経営ビジョンで電化による農業の発展を掲げています。

自社の強みである電化技術を活かしたイチゴの周年栽培の実証実験に取り組むことで、収益性のある栽培技術を確立して九州地区の農業の発展に貢献したいという想いがあります。

また、上寺いちご園がある福岡県朝倉市は、2017年に発生した九州北部豪雨による被災地です。九州電力株式会社は、地域に根差す企業として一次産業である農業の活性化だけでなく、被災地の復興という意義も併せ持っています。

上寺いちご園の事例を見る

農業を成功させる4つのポイント

紹介した事例のように、農業参入を成功させるために重要な4つのポイントについてご紹介します。

農地の確保

農業参入を検討する企業ごとに、候補の農地が決まっている、これから土地を農地さなければならないなど、スタート地点はさまざまです。
必要な農地の広さや環境も事業形態や栽培方法、目指す生産量など目的によって変わってきます。

耕作放棄地が年々増加していますが、希望の条件を満たした農地を見つけることは容易ではありません。

それでは、どのように農地を確保するのか?
まずは、各地域の自治体や農業委員会に企業側の条件やビジョンを担当者に伝え相談してみましょう。担当者とのつながりができれば、農家さんや地権者に掛け合ってもらい、条件の良い農地を借りることができるかもしれません。

ただし、農地の確保には時間が掛かることがありますので、農業生産を開始する1~2年前から、地域や関係者と良好な人間関係を作り、担当者に相談するなど事前の準備が重要です。

栽培作物の選択

栽培作物の選択は、事業を持続的に運営していく上で重要な判断になります。

例えば、トマトを栽培すると言っても、一般的に需要のある品種を選ぶのか? 珍しく付加価値の高い品種を選ぶのか? 高収量を目指すのか? 高糖度で質の高いトマトを目指すのか? など選択肢はさまざまです。

農業参入をする際には、マーケティング視点での市場調査とターゲット分析を行い、栽培作物を決定する必要があります。
栽培作物が決まれば、次は作物を売ることで生まれる売上と、栽培に関わる初期費用と運営費が課題になります。

目指す作物を作るために必要な設備費、栽培する上で掛かる維持費、作業者の人件費、これらを踏まえて売上目標と栽培に関わる費用を算出して事業のシミュレーションを行いましょう。

栽培技術の習得

企業が農業参入する上で栽培技術の習得は欠かせません。
企業の場合は、栽培経験のある人材を雇用することも選択肢の1つです。

しかし、同様の規模や作物での経験等の条件を満たす人材の雇用は決して簡単ではありません。そのため、栽培技術を習得する研修受講などの準備が必要です。

研修先の候補としては、一般農家や農業生産法人、市町村、JA、各都道府県の農業大学校などが一般的です。農業の特性上、気温や湿度が毎年変わることから携わった年数に比例して栽培技術も身についてきます。そのため最低でも1年、場合によっては2~3年に渡り研修を受講する必要があります。

とはいえ、栽培の準備に2~3年も掛ける時間の余裕がない企業も多いはずです。そのような場合には、事業開始後に栽培専門のコンサルティングに伴走支援を依頼するサービスも積極的に活用しましょう。

販売経路の開拓

農業参入で利益を生み出すためには「販売経路の開拓」が肝になります。

2021年に農林水産省から発表された「卸売市場をめぐる情勢について」によると、卸売市場を経由した青果物取引の割合は、平成初期をピークに市場外流通の増加などに伴い取扱数量は減少傾向で推移して、その後は横ばいが続いていると紹介されています。
これは、八百屋やスーパーマーケットで青果物を買う人が減ったことが原因です。

一方で、レストランなどの外食やお弁当などを購入する中食の割合が増えています。外食産業や中食、加工品を作る食品工場などは安定した価格・品質を求めています。
そのために卸売市場外の契約取引で一定数量を確保する傾向にあります。

また、オンライン販売の市場も成長しています。

多様化する販売チャネルのどれを選択するのか?
販売チャネルのニーズの調査・分析や販路確保のための営業活動も農業経営における重要な要素の一つです。

非常時の対応

農業参入では、非常時の対応も想定しておきましょう。

例えば、栽培や収穫に予定以上の時間がかかることで人件費の増加や、作業遅れやミスによって計画通りに出荷できない事態が発生することもあります。
害虫の発生によって計画が狂うことも考えられます。規模が大きくなればなるほど、非常時の対応を想定しておくことが重要です。

突発的な台風や地震、大雨などの自然災害によって修繕が必要になるかもしれません。また、作物価格の変動で当初予定していた相場で販売できずに売上が減少、燃油の高騰で暖房費がかさむなど、栽培以外の外的要因を踏まえたリスクヘッジも農業経営には求められます。

その対策として、保険への加入や各省庁が発表する補助金・補填金などの情報収集をするなど、万が一のリスクに備えて策を練っておきましょう。

農業参入で失敗しないためのポイント

次に農業参入を失敗しないためのポイントをご紹介します。

農業への知識不足

農業は、家族経営で親の作業を手伝う中で技術を身につけることが多いため、一般企業のような誰でも読めばわかるようなマニュアルは、多くの農家には存在しません。

また、季節や天候などの環境やビニールハウス内の条件は変わり続けています。学んだ知識や前年の経験が常に活かせるとは限りません。

病気や害虫被害も見ただけでは、何が原因なのか、効果的な対象方法も判断することは非常に難しいと思われます。

こうした農業の特性を理解せず、担当者をいきなり農業事業に異動させても、わずか数年で成果を上げることは困難です。

そのために、成功させるポイントでも紹介したように研修先でしっかりと基礎を学び、必要に応じて栽培専門のコンサルティングにアドバイスを求めていきましょう。

初期段階での高額な設備投資

農業への参入に失敗する企業の特徴を見てみると、大規模化・効率化・省力化を求めて初期段階から設備や農業機械などに高額の投資を行ったが、想定していた収益を上げられず資金繰りが悪化して撤退するといったケースがあります。

農業分野への参入を検討するなら、試験も兼ねて事業を小さくはじめたうえで、軌道に乗りそうな方向へ大きく投資していくという方法をとったほうが、リスクを減らすことができます。

一般企業の農業参入を阻んでいた農地取得の制約がなくなり、企業にとっては、新規事業として農業に参入するチャンスであることは間違いありません。

しかし、農業を事業として軌道に乗せるには多くの課題があり、農業の特性を理解しないまま参入することは危険であると念頭に置いておきましょう。

農業参入を成功させるためにも国や自治体のサポートを最大限に活用し、栽培や農業経営を相談できるパートナーを見つけ、スモールスタートではじめることがポイントです。

企業の農業参入の8割が赤字? 農業総合支援企業が教える成功への秘訣

補助金の獲得に役立つ制度

農業参入について情報収集をされている方は、「認定農業者制度」という言葉を目にしたことがある思います。

認定農業者とは、特定の条件を満たした農家や農業生産法人に対して、地方自治体や農林水産省などの公的機関が認定を行う制度となります。

この認定は、農業における技術や経営面での優れた計画や取り組みを評価し、認定を受けることで資金など支援が受けられる仕組みです。

認定農業者制度とは?

認定農業者制度は、農家や農業法人が農業経営の改善や規模拡大等に意欲を持ち、性別・年齢や営農類型、専業・兼業に関わらず、認定を申請できる制度です。

認定就農者制度の最大のメリットは、特定の融資の対象になることです。

例えば、農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)は、融資限度額が個人の場合で3億円、法人場合には10億円と金額が大きく、ビニールハウスやスマート農業設備の導入の資金源として活用できる支援制度になります。

申請の流れは、市町村の基本構想に沿った5年間の「農業経営改善計画」を作成し、指定の申請書類を提出し、市町村が認めれば認定されます。

農地が複数の市町村にまたがる場合は、単一都道府県の区域内であれば都道府県知事に、複数の都道府県にまたがる場合は国に申請します。

認定農業者の有効期限は5年で、満了時に継続して経営改善に取り組むことが見込まれる場合には更新も可能です。更新の際は、再び5年の計画を立てて申請します。

認定農業者制度に関する詳細については、別のコラムでも解説していますので、気になる方はご覧ください。

認定農業者制度の詳細はこちら

農業参入のご相談はイノチオアグリへ

イノチオアグリは「農業総合支援企業」をコンセプトに、ビニールハウスに携わり50年以上、培ってきたノウハウを活かし、さまざまな業種業態の企業の農業参入を支援してきました。

お客さまのご要望や条件に基づいて農業参入に向けた事業計画の作成や収支シミュレーションベースのご提案からビニールハウス、内部設備の設計と、農業参入までトータルで支ご援いたします。

さらに、各種研修プランや専門指導員によるサポートで、事業開始の準備期間だけでなく、栽培開始後の運営管理や従業員の労務管理、気象災害時のアフターフォロー、機器メンテナンスまで、お客さまの農業参入をトータルでサポートします。